A4_運動特性ディープ編

 機体運動には最大速度と限界速度という二つの上限設定があるが、この仕様は運動性能の低下が一方的な機動力の低下を招かないという特殊な状況を作りだしており、限界速度以上ではブーストパワーが高くなるほどアセンコストやリスクに対する実際の運動性能の上昇効率が悪くなりかつ加速性能が上昇する一方で回避運動を阻害されやすくなる性質を与えている。このためそれらを正しく把握することで中量級や重量級による機動戦術にとっても重要な要素になるというニクイ演出(?)がなされているのだ。
 そんなわけでここではACの慣性の法則と限界速度による機体挙動への影響や移動処理の実際などを詳しく解説する。各運動処理についてかなり細かい仕様にまで踏み込んで解説するが、隠しパラメータ等の紹介は含まないので興味のない方は時間の無駄になると思うので読み飛ばしていただきたい。ただ冒頭の慣性の法則と限界速度については結構重要かもね。

−−−目次−−−

慣性の法則と限界速度
  AC慣性の法則
  限界速度が機体挙動に与える影響
  余剰限界速度による切り返し遅延の実例
  限界速度の方位変化

距離の概念とその影響

移動処理の実際


<<慣性の法則と限界速度>>

 ACは通常二足歩行などの脚部動作を除いて常に慣性に影響を受けるため細かい機体制御が難しく操作技術の奥が深い。そしてACの機体速度には「限界速度」と「最大速度」という二種類の上限値がある。そこで加速度や最大速度、限界速度等が実際に機体挙動に与える影響や慣性の法則を分析し解説する。まず、ここで扱うパラメータの種類を整理しておく。

「速度値」 :現在の機体速度の内部処理値、xyz軸ごとに3つの数値があり、x軸とy軸の速度は相互に依存し(x・y軸で別々に処理すると斜め移動が速くなってしまうため)、z軸(垂直)は独立している。
「加速度」 :有効重量とブースター出力に依存する機体独自の加速度。加速している間フレームごとに「速度値」に加算される数値。
「最大速度」:有効重量とブースター出力に依存する機体独自の最大速度で、その機体における「速度値」の取りうる最大の値。
「限界速度」:脚部カテゴリ別に設定された「実際に機体が移動できる限界の速度」。「最大速度」とは別の上限値で厳密には「限界速度」は「速度値」とは独立した別の値。このため「速度値」の処理自体には影響を与えない。
「実速度」:機体が1fに移動する座標距離。「実速度」≠「速度値」なのがミソ。「実速度」の上限を速度値の単位に換算したものが「限界速度」。

※通常二足歩行は速度処理とは別に行われているためここでは除外して考える。

○AC慣性の法則

 これらのパラメータが機体の挙動にどのように作用するのか、例をあげて順に説明する。
 簡略化して仮に各パラメータが以下の数値だと仮定する。
「加速度」  = 100
「最大速度」 = 800
「限界速度」 = 500

ここで、ゼロ速度からブースト点火3f目の「速度値」は、
「速度値」 = 「加速度」×経過f
なので
「速度値」 = 100×3
      = 300
となる。

同じように加速し5f目で切り返す状況をfごとに表にしてみる。
※実際の処理では「速度値」と「実速度」は通常“64:1”という比になるが、ここでは比較しやすいよう便宜的に“1:1”として説明する。

例1「加速度」100、「最大速度」800、(5f目に反転ブースト)
経過f 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
速度値 0 100 200 300 400 500 400 300 200 100 0
実速度 0 100 200 300 400 500 400 300 200 100 0

 表のように加速にも減速にも同じように機体の「加速度」が用いられACには加速度を調節する機能がないので、結果としてゼロ速度から一定の速度に達する時間とそこからゼロ速度まで減速する時間は等しくなり、減速中もゼロ速度に達するまで慣性によって同方向へ移動しつづける。つまり現在の速度値はそのまま慣性となり、その慣性を消費するまで逆方向への移動はできない。そして水平運動性能は空中でも地上でも「加速度:最大速度」比がアセンに関わらず一定(地上ブースト性能は1:10、空中は約1:8で切り捨て誤差で若干異なる)になる設定なので、全ての機体でゼロ速度からその機体の最大速度までの加速・減速に要する時間は空地それぞれで一定になる。このためACは機体の運動性能が高いほど最大速度から減速しきるまでに要する距離が長くなる。当然、“同じ速度”からの減速や“同じ速度”への加速では運動性能の高い機体ほど短い時間で達成できるが、ACは8〜10f(0.5秒以下)で最大速度に達するため結果として意図的に短時間で切り返す操作をしないと高加速度化のメリットを最大限に発揮できない。
 つまり慣性の大きさは「現在速度/加速度」fという関係になり、かつ運動操作では「加速:減速」の比が一定になり最大速度と加速度の比も一定なので、最大速度に達している機体がうける慣性の大きさは原則として運動性能に関わらず一定になる。これがPSACの基本的な慣性の概念になる。

 このように通常の慣性制御では機体構成による操作性の差はなく、機体の向きに左右されない加速レスポンスがACの特徴である高い機動力と操作性を生み出しているが、「加速:減速」の比が一定にならない条件では機体コントロールがより難しくなる。つまり加速>減速あるいはその逆になる条件では慣性の影響がより大きくなる。たとえば空中では水平運動と自動的なブレーキングの加減速比は4:1になるので実質慣性が4倍相当になり地上よりも細かいコントロールが難しい。そして垂直方向の加減速比は常に「落下加速度>上昇ブースト加速度」になり下向きの慣性が強くなるので、上昇移動中の慣性消費は早く落下中の慣性消費には時間がかかる。つまり機体の上昇性能が低いあるいは上昇速度が小さいほどブースト停止後落下に転じるまでの時間と距離が短くなり、逆に落下している場合は機体の運動性能が低いほど落下の慣性を解消するのに時間と距離を要する。そして以下に解説する限界速度の余剰域も一時的にこの関係が破綻して慣性が強くなるような現象を起こすため切り返し運動などのパフォーマンスに影響を与える。

○限界速度が機体挙動にあたえる影響

 「最大速度」と「限界速度」の関係について、先ほどの例のままブースト11f目に切り返しブーストする状況を1f毎の表にして「速度値」と「実速度」の推移をみる。限界速度は500と仮定。(同じく便宜的に速度値と実速度を1:1としている)

例2「加速度」100、「最大速度」800、「限界速度」500の時(11f目に反転ブースト)
経過f 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
速度値 0 100 200 300 400 500 600 700 800 800 800 800 700 600 500 400 300 200 100 0
実速度 0 100 200 300 400 500 500 500 500 500 500 500 500 500 500 400 300 200 100 0

 上表のように内部の速度値は「最大速度」まで加速するが、実速度は「限界速度」に相当する速度までしか加速しない。そして最大速度がアセンで変化するのに対し、限界速度は脚部依存の一定値なのでこの余剰部分の大きさは運動性能によって異なり、運動性能が高いほど大きくなる。そこで比較のために運動性能を80%に下げた機体の速度推移をみる。先述のとおり運動性能の増減にかかわらず加速度と最大速度の比は一定、先と同様に11f目に切り返しブーストする。「限界速度」は脚部カテゴリに固有なので同じ500と仮定。

例3「加速度」80、「最大速度」640、「限界速度」500の時(11f目に反転ブースト)
経過f 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
速度値 0 80 160 240 320 400 480 560 640 640 640 640 560 480 400 320 240 160 80 0
実速度 0 80 160 240 320 400 480 500 500 500 500 500 500 480 400 320 240 160 80 0

 このようにいずれも「速度値」は「加速度」にしたがって「最大速度」まで上昇し切り返しによって減少していくが、「実速度」は「限界速度」で上限となり「速度値」が減速によって「限界速度」を下回るまで同じ速度を維持する。以降この「速度値」が「限界速度」を超えている部分を「余剰限界速度」と表現する。

 ここでもうすこし運動性能を低く設定し「最大速度」と「限界速度」が同じ値になる機体を考えた場合、「限界速度」と同じ「最大速度」まで加速し、切り返し後すぐに減速に転じるので表の“速度値”と“実速度”の推移がまったく同じになる。そしていずれも11f目に切り返しブーストをしているが実速度が減速を始めるのは運動性能の高い上表で15f目、運動性能の低い下表で13f目、そして最大速度が限界速度以下となる運動性能の低い機体では直後の12f目に減速を開始することになる。そしてその余剰限界速度を解消して減速を開始するまでの間は同一方向へ限界速度を維持したまま運動し続けることになる。つまりACは「減速する際に「余剰限界速度」を打ち消すまで「限界速度」を維持しつづける」という第二の慣性の法則を持ち、機体性能が高いほど「余剰限界速度」が大きくなり減速を指示してから実際に減速をはじめるまでに時間がかかり、逆に機体性能が低いほど「余剰限界速度」が小さくなり減速を開始するまでの時間が短くなる。以降、この余剰限界速度域による減速の遅延現象を「余剰慣性」と表現する
 また先述のとおり最大速度までに要する加速時間は機体構成に関わらず一定になるが、「限界速度」は運動性能には関係ない固有値なのでそこに達するまでに要する時間は機体の加速性能が高いほど短くなる。これにより運動性能はその上昇による限界速度までの瞬発力というメリットか、運動性能を低下させても余剰限界速度による減速遅延の軽減かという相反する有効性を生み出し、結果として運動性能の低下が一方的なデメリットにならない状況を演出し、さらに空地で運動性能の設定域が異なる仕様が中〜重量級アセンの多様な戦術的アプローチを可能にしている。
 これがPSACのブースト移動速度に関する慣性の法則の概要となる。

 具体的には「限界速度」は単純に機体が到達できる限界の速度という側面と、「限界速度」を超える部分の「余剰限界速度」がブレーキ時の減速処理に影響をあたえるという2つの側面をもち、この仕様は様々な運動のパフォーマンスにも影響を与える。例えば最大速度に達している機体が切り返し運動で機体被弾半径分の距離を減速で打ち消す(完全な予測射撃を回避する条件)までの時間は、限界速度以上の性能を持つ機体であればほとんど同程度で、条件次第(絶対軸方向に近い運動、後述)ではむしろ高運動性能の方がシビアになる。また旋回で加速方向を変えても余剰慣性を消費するまでその方向の限界速度を維持するので、内側へ旋回を試みてもドリフトするように外へと膨らんでしまう(たとえば高機動機の定常円旋回が不安定に増大するのはこの余剰慣性が原因の一つ)。あるいは「ブースト最大速度」は空中よりも地上の方が大きく設定されているため余剰慣性の影響が地上の方が強く自動追尾するミサイルや正確な予測射撃などを切り返し回避しにくい状況を生み出している。一方で余剰域に達する前に的確に切り返すことで空地に関わらず運動性能を最大限に発揮することができ、そしてそれに要求される切り返しの最低間隔は運動性能が高いほど短くなる。
 そして運動性能が低下しても空地双方の余剰慣性の影響を低減しつつ、機体重量などによって空中あるいは地上の限界速度を目標としたアプローチが可能になり、加えて地上ブーストのエネルギー効率がこれを補完する。ACはこの空地二段階の運動性能設定域と限界速度、各脚部固有の挙動や特性が運動に与える様々な影響、そして移動後方へそれる射撃システムやそれを相互に補完する予測角度射撃やミサイル・ロケットなどの仕様・パラメータ配分などの複雑な兼ね合いにより機体運動性能域によってベクトルの異なる機動戦術を展開できる仕様を実現している。これにより機動力あるいは耐久力有利といった一方的な勢力図にはならず、重量級も単に堅くて高火力という単純なものではなく機動兵器としての戦術を突き詰める余地を十分に備えており、中量級もまた軽対重バランスの間を埋める単純なものではなく独立したピークをもつ三角形を形成することに成功している。

 なお通常二足歩行は移動速度が直接「実速度」として処理されており、間接的処理のための「速度値」を持たない別の内部処理として扱われているのでいっさいの慣性を発生させない。これが二脚系で「踊り」や「凪」が可能な理由で、逆に慣性の束縛から脱しえない四脚にとっては回避コストが常に増大する原因の一端でもある。また通常歩行で切り返す反応が鈍い場合があるのは慣性の影響ではなく歩行が周期的に加減速や制約動作を繰り返しているためで、一歩の周期が長く遅くなるほどそのパフォーマンスが低下するので脚部カテゴリや切り返すタイミングでレスポンスが異なる。

○余剰限界速度による切り返し遅延の実例
 参考までに最大速度からの切り返しで、余剰限界速度によって発生する最大の減速遅延時間と運動性能の関係を下表にまとめてみた。数値の単位はf(小数点二桁目以下切り捨て、小数点一桁目は目安に)。これはあくまでも発生しうる最大の余剰限界速度とした場合のもの。

運動性能レベル 二脚 四脚・タンク
空中加速 空中最大 地上 空中 地上 空中 上昇 落下
64 50 64 2.4 4.6 1.8 10.8 18.5
63 50 64 2.4 4.6 1.8 10.8 18.7
62 49 64 2.3 4.6 1.7 10.0 19.0
61 48 64 2.2 4.6 1.5 9.2 19.4
60 48 64 2.2 4.6 1.6 9.2 19.7
59 47 64 2.1 4.6 1.4 8.4 20.0
58 46 64 2.0 4.6 1.3 7.6 20.4
57 45 64 1.8 4.6 1.1 6.9 20.7
56 44 64 1.7 4.6 1.0 6.1 21.1
55 44 64 1.7 4.6 1.0 6.1 21.5
54 43 64 1.6 4.6 0.8 5.3 21.9
53 42 63 1.4 4.5 0.6 4.5 22.3
52 41 62 1.2 4.4 0.5 3.7 22.7
51 40 61 1.1 4.3 0.3 3.0 23.2
50 40 60 1.1 4.2 0.3 3.0 23.6
49 39 58 0.9 4.0 0.1 2.2 24.1
48 38 57 0.7 3.9 1.4 24.6
47 37 56 0.5 3.8   0.6 25.1
46 36 55 0.3 3.7   25.7
45 36 54 0.3 3.6     26.3
44 35 52 0.1 3.4     26.9
43 34 51 3.2     27.5
42 33 50   3.1     28.1
41 32 49   3.0     28.8
40 32 48   2.8     29.6
39 31 46   2.5     30.3
38 30 45   2.3     31.1
37 29 44   2.2     32.0
36 28 43   2.0     32.8
35 28 42   1.8     33.8
34 27 40   1.4     34.8
33 26 39   1.2     35.8
32 25 38   0.9     37.0
31 24 37   0.7     38.1
30 24 36   0.4     39.4
29 23 34       40.8

※値は余剰限界速度によって最大速度から減速を開始するまでの時間差(f)、小数点以下の差分は減速開始fの「発生する加速度/機体加速度」に相当する。
※地上では加速度と最大速度は同じレベル値を持つので表では省略している。
※二脚の上昇及び落下は最大速度より限界速度が高いため発生しない。
※四脚・タンクは地上で余剰限界速度に達する脚部が存在しない。
※落下では限界速度と最大速度がいずれも固定値なので余剰慣性が発生する四脚・タンクは運動性能が低下に伴って減速遅延が増大しつづける。

 なお別項で解説するカメラワークにより実際の機体運動と感覚が一致しづらく、加えて機体ギミックは機体速度ではなく操作に反応するのでなおさら速度変化を把握しにくい。また余剰慣性は減速操作から減速開始までの時間を長くするが、加速と減速にかかる最終的な時間は一定になるので見た目ではその影響がわかりにくい。
 参考までに余剰限界速度による減速遅延の最も分かりやすい例は四脚・タンクの落下中の上昇遅延で、確認したい場合は分割対戦で同じ性能の四脚機体を近距離で正対させて並走しながら落下中(ポーズを利用するとやりやすい)に片側のみブーストすると、機体ギミックとブーストは開始するが余剰限界速度を消費するまで減速できずに並走したまま落下する。また実践的にはサテライト運動中の狙撃回避やミサイル連射を左右へ切り返し回避する操作などで表面化しやすい。

○限界速度の方位変化

 限界速度の設定は最大速度とは異りx軸とy軸それぞれで独立した限界速度として適用を受ける性質がある。つまり速度ベクトルの上限ではなく各方位ごとの上限として制約される。具体的には限界速度“4800(二脚系)”はx軸とy軸それぞれの速度値が4800まで実速度に反映されることになるので、xy軸45度方向へは最大“6788”(ルート2倍)までの最大速度が実速度に反映されうる。ただしこれは方向不変のxy軸(東西南北の方位に相当)にのみ影響を受けるもので、斜め移動操作で速く動けるものではない。したがってこの特性は絶対軸の方向に縛られる不安定なもので、実践的にも絶対軸を意識して運動することはあまり現実的ではない(戦術によってはその限りではないが)。また高機動機の定常円旋回が不安定になるのもこれが原因の一つになっており、移動する方位によって巡航速度が変化するあるいはサテライト運動で緩やかに加減速を繰り返すなどの挙動を発生し、運動操作のレスポンスも方位によって変動する。
 PSACでは機体速度域が予測射撃の被弾境界付近にある条件が多いのでまったく同じタイミングでの回避操作あるいは単一運動でも、その方位によって回避の正否や効率を左右する場合がある。そしてこの不安定要素は運動性能の低下とともに減少し、限界速度以下では発生しない。

 ややイメージしづらいので、例えば真上から見た図として機体を中心とした一辺が限界速度の2倍の正方形と最大速度を半径とする円を考えれば分かりやすいかもしれない。この場合は円と正方形の重なる部分が実現可能な実速度の範囲になる。したがってこの正方形の内側(限界速度以下)では円半径(最大速度)に従って制約なく性能が増減し、正方形の内側に円が接するとき余剰を発生させない最大性能となる。そしてそれを超えると円(最大速度)が正方形からはみ出してしまうので、円半径が拡大するほど正方形と重なる部分の増加率(性能の向上に対する実際の上限速度の向上割合)が小さくなってゆき、同時に円が正方形を逸脱した部分の面積(余剰限界速度)が増大してゆく。そして正方形が円の内側に接するときあらゆる方位で実速度の上限に達する。ただし加速度性能については限界速度の制約範囲まで達しないのでデメリットは発生しない。

 したがって限界速度を超える速度域での性能アップは、加速度の上昇にダイレクトに貢献するが最大速度へはアセンコスト悪化と余剰慣性による不安定リスクの増大を伴う。逆に限界速度以上なら運動性能の低下に対して総合的(操作性を含めて)な機動力の低下は小さく抑えられることになる。例えば影響が大きい絶対軸方位に沿った運動(開幕平行移動など)で最高性能と限界速度級の性能の機体で並走しながら同時に切り返してみると、低性能機体の方が迅速に切り返したあと高性能側が高加速度で追いつくというようにほとんど並走したまま加減速することが確認できるだろう。つまり方位に対して45度に近づくほど高性能機体の方が巡航速度が高くなり、逆に正確に沿っているとむしろ低性能機体の方がハイパフォーマンスになるが、サイトギャップ(射撃特性ディープ編で解説)の影響で高性能機体の方が体感速度が高くなるため直接比較してみないと分かりにくい。
 限界速度以上の実践的な性能の優先度については機体コンセプトや戦術によって異なると思うが、余剰慣性の影響は切り返し回避に影響しやすいものの的確に切り返すことができればそのリスクも低減できるし高機動化による加速度増大のメリットは十分大きい。一方で余剰が小さくなるように機体を組んでも加速度が低下するので的確な回避操作は要求されるが単純な機動力の低下とはならず、その分を火力や装甲あるいは持久力に配分できるので運動性能の設定域が空地二段になっていることも考えるといずれかの限界速度達成を目標としたようなアセン等でもそれを生かすことができる。また上記の四角と円で例えたように高性能域になるほど徐々に性能向上効率が悪化し不安定要素が高まっていくというものなので、限界速度か高機動かという二極化を目指すべきというわけでもない。ただし限界速度を下回る運動性能域では(E消費は別として)一方的に機動力の低下を招く。このようにややナンセンスにも思えるこの仕様は高機動を追及するメリットを確保しつつ中量級や重量級それぞれに戦術・アセンバリエーションの可能性に深みを持たせるという意味で肯定的にとらえたい。

 なお、限界速度の適用を受けるブレードホーミング速度もx軸とy軸で独立しているが、こちらは速度処理も例外的に各軸で独立して制御されているため水平限界速度を超える追跡速度をアセン要素として考える必要はほとんどない。つまりブレホは例外的に限界速度きっかりの最大速度であってもx軸とy軸双方にその速度が独立して与えられるため、それ以上の性能でも実質的に速度は変わらない(詳しくは斬撃挙動ディープ編で解説)。また、通常歩行はx軸y軸の速度という概念自体から独立しており、方向別の動作処理になっているため斜め前方歩行は方角に関係なく速く移動できるので誤解のなきよう。


<<距離の概念とその影響>>

 ACの距離には処理上の特殊な概念がある。距離に相当するパラメータは射程距離やロック距離、隠しパラメータには弾速や判定サイズ、運動性能から最終的に換算される実速度などがある。

 「距離」はx・y・z軸座標の最低単位を距離“1”としているが、この概念は垂直と水平で独立しているため距離範囲は球状ではなく「円柱状」になる。具体的には水平方向の距離範囲は設定距離を半径とする二次元(平面)の「円」となり、垂直方向の距離範囲は設定距離を高さとする一次元(線)の長さで与えられる。つまりAC(に限らないかもしれないが)は正確には3次元処理を行っているのではなく2+1次元処理を行っていることになる。例えば距離“100”の範囲とは半径“100”で高さ“1”の円盤を上に百枚下に百枚積み重ねた構造をしており、最終的に直径・全高“200”の円柱状の範囲を表している。これがACの距離の概念となる。
 つまり現実世界では球状となるはずの距離概念がPSACの世界では円柱状となっている。

 この仕様の影響として例えば、機体運動が垂直と水平で独立していることで斜め上方には見掛け上速く移動できることや、射程距離あるいはロック距離は機体(正確には射出口の座標)を中心とした円柱状をなしており上下45度方向の距離が最も長くなること、判定サイズを持つ弾や機体(機体は半径及び全高の2種類のパラメータを持つ)も円柱状などが挙げられる。
※武器の弾速についてはx・y・z軸それぞれの双方の座標差から比例分配されるため見かけ上独立していない。このためロックしているのに届かなくなるパターンもある。またエイミング中の距離表示も座標差から算出されるので独立していない。
※地形などの原則的に移動しない構造物は任意の形状をしている。爆風は不明。

 実際の例としてこの影響は移動するものが双方ともに同じ影響を受けるか、片方だけが影響を受けるかで結果が変わってくる。例えば切り返し回避をしながら追いや引きを展開する状況などで、水平方向への切り返しは成分が独立しておらず実際の移動距離として処理されるため到達までの時間を長くするが、上下方向の切り返しは前進し続けていれば水平方向への到達までの時間に影響しない(直進した場合と同じになる)。双方とも同じように移動している場合には相対的に影響はないが、例えば双方とも同じ方角へむけて移動しながら片方が水平に蛇行しもう片方が垂直に蛇行すると垂直方向へ蛇行する機体の方がロスなく移動できる。ただし限界速度の影響を受ける場合、たとえば北方向の速度成分を常に限界速度以上に維持した状態で蛇行する場合などはその限りではない。また通常歩行やブレホ等の例外もある。

 まあ目に見えて違うほどのものではないが、端的に水平と垂直運動を合わせると大きな運動を伴っても水平方向のロスを抑えて移動できるもので、この仕様の影響は水平方向に対する垂直方向の速度の比が大きくなるほど顕著になる。特に顕著なものはダッシュジャンプで、これによって軽量級と重量級の差が増大し、四脚と二脚の限界速度による移動速度差が圧縮される傾向にある。


<<移動処理の実際>>

 機体運動は内部の速度値に対して“64”おきに実際に1fで移動する座標距離として反映される。つまり速度値「64」で距離「1」、「640」で「10」、「6400」で「100」だけ1fで該当方向へ移動する。ただし実際に反映される最低単位が“64”おきなだけで当然内部処理ではその間を取りながら計算される。単純には速度は内部で“0〜10000”の間で処理されて実際の運動には“64”おきに反映されて端数は無視されると考えて支障はないが、厳密には−32768〜32768の範囲で処理されおり、移動速度はxyz軸の各方向に正方向と負方向があるのでこの正負で反映される実速度に“1”の差が生じる。たとえば開幕から右に移動した場合と左へ移動した場合で実速度に“1”の差が生じる。
 これは、正方向と負方向の間にある“0”の取扱い、つまり“64”おきという幅のある数値群のどの範囲を“0”として扱うかということによる差で以下のように区分されているために発生する。

実速度 速度値
 
+192 +255
+128 +191
+64 +127
±0 +63
−1 −64
−65 −128
−129 −192
 

 このように「64」の倍数の場合は正側と負側で同じ速度になるが、その間の数値では正側と負側で「1」異る。例えば、ブースト最大速度を“50”に設定すると負方向には毎f“1”で移動できるが、正方向には毎f“0”となり移動できない。そしてxy軸方向の速度処理は相互依存関係にあるため速度値が正確に64の倍数になることは少なく、通常歩行を除く移動には正負逆方向の移動速度にほぼ恒常的に「1」の差が生じることになる。
 わずか1の差なので気にする必要はほとんどない。極端に移動速度がおそいタンクには10%以上の差になったりするが元々遅すぎるので焼け石に水だろう。また、ステージによって開幕時の機体の向いている方位が変わるので開幕前進が正方向とはかぎらない。

 さらに水平方向について、最大速度に到達したあとその速度値が数fの振幅で速度に比例した一定の値を上限に増減を繰り返す仕様がある(最大速度に比例、0.4%程度なので1/256かな?)。この振幅は実速度にはほとんど関わらない程度で無視できるほど小さく、垂直方向にはこの増減振幅の仕様は無い。例えば、最大速度“1000”の場合は、その最大速度に到達したあと“1000〜1004”の振幅を数fの周期で繰り返す。例外としてこの小さな振幅が“64”の倍数を超える条件で実速度が変化しうる。
 具体的に例を挙げると、「64」の倍数にかなり近い最大速度をもつ「LF−205−SF」「LF−TR−0」の移動速度は“3640”で、水平方向へ最大速度に達したあと“3640〜3652”の範囲で速度が振幅し、この振幅で「64」の倍数“3648”を超えてしまうため実速度に反映され、結果として同脚部の移動速度は実速度56+α(速度Lv26+α)となる。そしてさらに「64」の整数倍となる“3648”では正側負側ともに実速度が“57”となるが、以下の表のように負方向では“3648”以下で実速度が“57”、“3649”以上で実速度が“58”になる。一方、正方向では“3647”以下で実速度が“56”、“3648”以上で実速度が“57”になる。

正方向の実速度と速度値の範囲
57 +3648 〜 +3711
56 +3584 〜 +3647
負方向の実速度と速度値の範囲
57 −3585 〜 −3648
58 −3649 〜 −3712

 速度値は一定の周期でこの範囲の増減を繰り返すため、負方向の実速度は“57.+α”となり正方向の実速度は“56.+α”となる。そして通常の戦闘においては移動速度が常にx軸とy軸成分に分配されるため、この脚部に関わらず瞬間的かつ頻繁に各軸成分でこの現象が発生していると考えていい。またこの振幅によって移動速度が64の倍数を超えると実速度が増減するが、この状態がxy軸それぞれで発生すると最大“1”それぞれで変動することになる。

 振幅をともなうので恒常的なものではなくその瞬間のfのみ適用されることから狙って発生させることは難しく、変動幅が小さいため実感することはまずないだろう。ただし並走などを利用して速度を実測しようとする場合は必ず同じ方向への移動に固定し振幅範囲が速度に関わらない運動性能を基準としないと誤差が発生し、内部座標での一定時間の移動距離から算出する場合でもこの仕様によって実測値が変動する。また2P側と鏡面運動しても方位で速度がずれるので完全再現しないことや、モニタも正しい情報を表示しているとは限らない(確実に正しい情報は残弾数くらいか?APすら内部では4倍だし)。
 余談だがこれらの仕様によって段階的ではなくかなり微妙な速度の加減速を演出することが可能なわけだが、実際のところそんな微妙なところをユーザーが気付くはずもなくこの増減振幅が何のための仕様かは不明としかいいようがない。匠のようなコダワリか、あるいは0の取扱いによる誤差を吸収するためのものだろうか。この仕様から連想するものといえばレース系に見られる最高速度のふらつきだが、ひょっとしたら速度計をつけるつもりだったとか・・・。しかしこの仕様は実速度ではなく速度値側のもので限界速度以上では速度計も意味がなくなってしまうので限界速度の方が何らかの調整のために後から追加された仕様なのかもしれない。


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