B2_射撃特性マニアック編

 このレポートではそもそもの目的であった射撃システムと射撃補正について解析し、その結果に基づいて射撃技術や回避技術の基本を検証し、同時に各武器に設定された隠しパラメータを調査することでそれぞれの武器の隠れた性能を考察する・・・つもりだった。ところが目的にあげた「射撃補正」について、各武器個別に設定されていると思っていた「補正強度」に相当する数値や仕様はそもそも存在していないという結論に至った。そして射撃武器の予測に関わる処理は大きく3種類に分類され、同一カテゴリ内での命中精度はほぼ弾速と実践的な戦術との相性に依存すると考えて間違いないと思われる。各武器で予測精度が違うように感じる原因については射撃システムの細かい仕様や原理に踏み込むため、詳しくは射撃特性ディープ編で解説する。
 さて、ACには様々な火器が用意されているが、武器ごとに設定されているパラメータとは別にカテゴリごとに異った射撃システムや特性を採用している。それぞれの射撃システムが幾つかの特徴的な性質をもつため、これを知ることは機体に組み込んだ火器類を効果的に扱うために重要になるだろう。ここではちょっと目的を改め、武器性能ベーシック編で分類したカテゴリを基準にそれぞれがもつ射撃システムの特性を説明したい。なお本レポートで分類している射撃システムの名称は解説のために便宜的に命名したものなのでご了承願いたい。

−−−目次−−−

射撃武器の弾の性質

精密予測射撃

通常予測射撃
  ・武器腕と両肩キャノンの射撃特性

予測角度射撃
  ・グレネードキャノンの射撃特性

エイミング角度射撃
  ・精密・通常予測武器による手動補正射撃

非予測兵器

誘導兵器


<<射撃武器の弾の性質>>

 ACの武器で現在までに確認できている射撃システムは細かく分けると最低でも5つあることがわかった。それぞれの射撃システムごとに特徴的な性質があり、これを理解することは命中率と回避率向上への礎になるかと思うが、なにより隠れた武器特性を引き出すことでより多彩な戦術を楽しめるようになることを期待したい。そこでまず各射撃システムを理解する上で射撃武器が射出する「弾」のもつ基本的な性質を説明する。射撃武器の弾は例外を除いて以下に示す共通の性質をもっている。ただし、ミサイルとミサイルに準ずる武器(爆雷)の弾は全く異る性質をもつので後述する。

・弾は慣性の影響を受けない、したがって弾速は発射時の機体速度の影響を受けない。
・弾は重力など加速度の影響を受けない、したがって弾道は必ず直線となる(※1)。
・弾ごとに「弾速」が設定されており、弾自体は推進力をもたないので弾速は常に一定となる。
・弾にはそれぞれ集弾性という設定があり、基準となる弾道を中心として発射点からランダムに拡散する。
・集弾性が“0”の場合は弾道は一点に収束する(同じ条件では必ず同じ場所に着弾する)。
・弾同士はエンカウントしない(※2)。
・射撃した機体に対してはエンカウントしない。(※2)
・爆風は例外を除いて敵及び自機に対してエンカウント判定をもつ(※3)。
・弾は例外を除いて体積や面積をもたず、現在のフレームの座標と前のフレームの座標を結ぶ直線がエンカウント判定となる(※4)。

※1:稀にRF/Eなどで光線が途中で曲がっているように見えることがあるが、描画の制約による現象で弾道は直線で曲がることはない(必ずしも描線上に判定があるとは限らない)。
※2:例外として「WRR−10」のみ全ての弾・機体に対してエンカウント判定をもつ。
※3:例外として「WM−X15−EX」の爆風は自機に対して判定を持たない。
※4:例外として「WC−GN230」「WC−IR24」「WRR−10」は判定範囲を持つ。厳密には直撃判定ではなく爆破する範囲、他の武器と同じ線判定の直撃判定も持つと思われるが爆風威力しかないので分類する意味はない

 射撃武器の弾は慣性及び重力の影響を受けず弾速が常に一定で、射撃点から目標点まで直線的に移動する性質をもつ。後退中もしくは前進中に射撃しても弾の速度は常に一定に維持されるので自機の速度を利用して弾速や軌道をコントロールするようなことはできない。実践的な影響として例えば追撃戦のような同程度の速度で移動する機体間の射撃戦となる場合、弾速が常に一定なため結果的に引く側が受ける弾は相対速度が遅く、追う側の受ける弾は相対速度が速くなり、追う側より引く側の方が回避時間に余裕が生まれやすいなどの状況が発生する。ただし追う側・引く側ともそれぞれに有利に作用する仕様が多分にあるので、どちらが有利になるかはアプローチ次第となり必ずしも引く側優勢にはならない。

 また一部の例外を除いて弾には判定サイズはなく、原則として現在の座標と1f前の座標を結ぶ直線上に地形オブジェクトか機体被弾サイズが重なる条件でエンカウントする(1f間に移動した距離に相当する点と点を結んだ直線が当り判定になる)。つまりグラフィック上の弾の大きさはダミーと考えていい。そして機雷を除いて弾同士はエンカウントしないためミサイルの迎撃等は不可能なのでコア機能か地形などを盾にする必要があり、射撃した弾は自機には判定を持たないが爆風とミサイルは自機に対しても判定を持つ。余談だが弾に限らず全般的に機体運動や弾あるいは障害物とのエンカウント処理などとグラフィック描画は別々に処理されている。たとえば空中ブレードモーションのグラフィックはブレード判定とは別に描画されており描画座標と判定座標に直接的な相関性はない。どちらもの処理も約22f/秒で重くなると描画処理側をスキップする場合(特に分割対戦)があるようだが詳しく調べていない。

 これらの「弾」のもつ共通の性質を維持しつつ射撃する武器それぞれ特有の射撃システムに基づいて射出され、実践的な武器特性はその射撃システムの違いによるところが大きい。またミサイルは慣性の影響を受けるため以上のような射撃武器の性質とは相反する特徴を持つ。これについてはミサイルの項で説明する。


<<精密予測射撃>>

 精密な予測射撃を行うカテゴリで、武器の発射座標から予測される目標座標へ「座標」を基準とした射撃を行う。精度が高く回避運動よりも先に着弾させることができる近距離や回避運動の合間を埋められるだけの連射力をもつ武器ほど性能を発揮しやすい。対象となる武器は0系射撃武器7種、一般に軸無視武器と呼ばれるカテゴリにおおまかに対応する。

精密予測射撃武器による射撃システムには以下の性質がある。
・目標座標は現在の目標の移動方向と現在速度から着弾座標が予測され射撃される。(※1)
・弾道が発射座標から目標座標へ三次元的な「座標」を基準とした直線となるためほぼ死角が発生しない。
・射撃と弾道は発射時の銃口の向きに依存しない。
・射撃と弾道は発射時の機体の運動及びロックサイト・カーソルの位置関係などの影響をうけない。
・1P側の射撃では予測と射撃に1fのギャップが発生する。(※2)
・CPU側の射撃では予測と射撃にギャップは発生しない。
・その他射撃武器共通の性質を持つ。

※1:座標予測に関わる係数は解析していないが、目標の移動方向と現在速度、弾速から算出されると推測される。
※2:射撃の1f前の予測による射撃を行う。CPU側は射撃の瞬間の予測を適用する。

 精密予測系武器のロック状態は選択武器の弾速に従って目標予測座標を捕捉している状態で、2次ロックさえしていれば銃口の向きやロックサイトの状態や位置関係そして機体の挙動に関わらず必ず予測座標にむけて射撃する。これは通常・精密予測射撃システムの恒常的な特性で、例えば武器切り替え後に銃口が下を向いていても2次ロックしていれば向きに関わらず目標にむけて射撃され、原則的にサイトと目標の位置関係や機体旋回・加速などで着弾点が変化することはない。したがって自機の状態に関わらず常に安定した射撃が可能になるが、一方で機体操作によって着弾座標を意図的に補正することは出来ない。また予測射撃が座標基準なため内部処理の角度には影響を受けず、例えば1度と2度の間には射撃できないというような死角は発生しない。そして散開しない武器は処理上の誤差を除いて必ず予測点に射撃し、マシンガン系などの拡散する武器は射撃点から集弾性パラメータにしたがって弾が散開する。

 このカテゴリの特徴として目標が回避動作等を行わない限り高精度で命中する性質があり、目標側の移動角度(射線と移動線の交差角度)の影響を受けにくい。実践的にはロックサイトに捕捉していれば自機の運動状態に関わらず高い命中力を発揮できるということで、単一運動や切り返し回避の暇がない近距離において性能を発揮しやすい。一方、これらの特徴は着弾点が正確に射撃システムの予測に縛られるということで、フェイントモーションや的確な回避運動には弱い性質がある。このためか全体的に回避運動の空隙にもコンスタントに削りつづける連射系・低攻撃力の武器がラインナップされている。このように射撃精度の良さは単純なメリットとはならない場合もあり有効距離や互いの移動方向、状態等をしっかり把握・マネジメントすることがキーになるだろう。そして回避側からみた場合には同一方向へ同じ速度で移動しつづける動作では回避が難しいので、切り返し動作や加減速等の予測偏向動作そしてそれに必要な距離の確保が必須になる。命中率や回避効率に関わる仕様などは射撃特性ディープ編で解説する。

 なお1P側には予測と射撃に1f分のギャップがあり、目標が射撃に対して十分高い角速度(射撃に対して直角に近いほど、移動速度が速いほど角速度が高くなる)で移動していると単一運動にも命中できないことがあり、CPU側の射撃には予測ギャップがないため単一運動では必ず命中する特性がある。これはミサイルを除く予測射撃武器の恒常的な特性で俗に2P補正と呼ばれる仕様かと思われるが、結果として目標の運動に対して1f分過去の位置に着弾する性質を付与する。この仕様では精度低下のデメリットに対して戦術性や狙撃適性に関わるメリットも発生するため必ずしも不利になるとは限らないが、精密予測武器はその基本的な特性からデメリットを抑えやすくメリットとして生かしにくい傾向がある。具体的にはもともと射撃精度が高いため基本的には切り返し運動や加減速等を伴う回避を行う必要があり命中力が比較的安定するので汎用性に優れるが、連射系・低単発威力なので狙撃や連携など特化戦術的な適性はやや低いことによる。2P補正に関しては裏話篇で取り上げているので興味があったらそちらを参照してください(ただし筆者の個人的主観や考察を多く含みます)。


<<通常予測射撃>>

 予測から僅かに遅延した射撃を行うカテゴリで、武器の発射座標から予測される目標座標へ「座標」を基準とした射撃を行う。このため射撃が目標移動に後退しやすく命中率は射撃技術やターゲットの運動に大きく左右される。対象となる武器は20系、40系、60系のロック可能な射撃武器(※1)、一般に軸武器と呼ばれるカテゴリにおおまかに対応する。

通常予測射撃武器による射撃システムの性質以下のとおり。
・目標座標は現在の目標の移動方向と現在速度から着弾座標が予測され射撃される。
・弾道が発射座標から目標座標へ三次元的な「座標」を基準とした直線となるためほぼ死角が発生しない。(※1)
・射撃と弾道は発射時の銃口の向きに依存しない。
・射撃と弾道は発射時の機体の運動及びロックサイト・カーソルの位置関係などの影響をうけない。
・弾は射撃1f後に移動を開始する。(※2)
・CPU側の射撃では予測と射撃にギャップは発生しない。
・1P側の射撃では予測と射撃に1f(f:時間を表す単位フレーム)のギャップが発生する。(※3)
・その他射撃武器共通の性質を持つ。

※1:例外として「WG−XW11」のみ上側が通常予測射撃、下側が予測角度射撃(後述)に該当する。
※2:射撃fはグラフィックが表示されるが移動距離をもたないため判定は発生しない。つまり移動開始が1f分遅延する。
※3:射撃の1f前の予測による射撃を行う。CPU側は射撃の瞬間の予測を適用する。

 通常予測武器は射撃した弾の移動処理に1f分の遅延がある点を除いて精密予測武器の射撃システムとほぼ同じ性質を持っており、CPU側も同様に1f分の移動遅延が発生する。この性質により目標が射撃に対して高い角速度で移動していると命中させるのが難しくなる。ただし、切り返しや細かい運動をしている場合にはその限りではない。そして、拡散系の武器はその弾道を基準に各武器に設定された集弾性によって散開する。

 実践的には着弾位置が予測に対して若干後退する特性を持ち、単一運動による高速移動目標に対しては相性が悪いため命中させるには戦術的な駆け引きや射撃技術を要求される。具体的には高速移動する目標に対して弾道が後ろにそれてしまうので目標の挙動に合わせた狭角射撃あるいは切り返し運動などの効果的なタイミングや着地や着弾硬直のスキあるいは連携戦術を狙うなど、相手の行動の予想や他武器との組み合わせによる戦略的展開が基本となる。そして移動後方側へ命中範囲をもつことで結果として切り返し運動などの瞬間的な機体挙動を吸収する性質があるので単純なデメリットというわけではなく、この性質を生かした切り返しモーションへの狙撃なども通常予測武器の戦術要素になり、後述する手動補正射撃などとの戦術性の差を利用した駆け引き要素にもなりうる。ついでにもともと単一運動での回避が難しいタンクなどの切り返し必須な低運動性能機体にとってはむしろ回避が難しくなる場合もある。命中・回避効率に関わる要素はやや細かい内容になるので射撃特性ディープ編で解説する。

 この系列には連射系から単発、衝撃系や高火力まで様々にラインナップされているので戦術にみあった武器をチョイスできるのも特徴だが、精密予測武器に対してこの通常予測武器がメインになっていることはACをより面白くし技術的な深みを引き出す要素ともいえるだろう。「ただではあたらない」ためテクニックや駆け引きによる回避力や射撃力の奥ゆきが非常に深く、上達するほど戦術にバリエーションを生み出せるうえ、その特性を逆手にとれば「ただでは避けられない」という状況を戦術や射撃技術によって達成しうるからだ。そして各武器の選択がパラメータだけに左右されないというシチュエーションを演出している。
 尚、各武器の命中精度については「補正強度」という概念がないため弾速と戦術およびその有効距離との相性に大きく依存する。また精密系と同様に座標を基準とした射撃で着弾点が銃口の向きや機体挙動に依存しないので着弾座標や弾道を意図的に補正することは出来ない。

 なお1P側は予測と射撃に1f分のギャップがあり、もともと予測に対して後退する性質に加えて予測が1f分過去へずれるため結果的に射撃時の目標運動に対して後退する距離が大きくなる。このため単一運動や加速運動には弱くなるが、切り返しや減速運動に対しての命中条件が有利に働く性質があり、精密系に比べ予測ギャップの有無による戦術性の違いが大きいが各武器特性とその使い方次第で有利にも不利にも振れるのでアセンや戦術そして射撃技術への要求が高い。なお1P側の予測ギャップと通常予測武器の弾の移動遅延は原理的にも実践的にも別ものなので同等に扱う事はできない。

○武器腕と両肩キャノンの射撃特性

 双発型あるいは二門兵器は左右から計二発以上を同時発射するためやや特殊な性質がある。これらは左右の武器がそれぞれ予測射撃を行うのではなく、武器腕は主に右門、両肩キャノンは左門が予測射撃(以降、予測中心側と表現)を行い、もう片側はこれと平行に射撃(以降、平行射撃側と表現)する。したがってモニタ上で予測中心側の方向へ移動する目標と、平行射撃側へ移動する目標に対しての戦術的な違いを生じる。
 まず予測中心側の射撃は通常予測射撃系の性質をもち、平行射撃側は予測中心側に対して射撃幅だけ左ないし右側から平行射撃を行う。そして通常予測射撃は射撃時の目標移動に対して若干後退するが、平行射撃側の方向へ移動する目標には平行射撃が予測中心側の射撃より射撃幅だけ先行するため単一運動に対して命中しやすくなる。逆に予測中心側へ単一運動する目標には命中しづらくなるが、平行射撃によって後方側へさらに大きな命中範囲をもつことになるので切り返しや減速などにはより命中しやすい。このように平行射撃側への運動には単純に射撃するだけでも命中させやすく、予測中心側への運動には単純な射撃では命中できないが的確に射撃できれば回避がより難しくなるという優れた特性を有している。そして実践的には予測射撃するのが片側だけなので左右とも直撃させるのはやや難しく、平行射撃幅が小さいほど命中範囲が狭くなり両門とも直撃させられる可能性が高くなり、逆に射撃幅が大きいほど両門直撃の確率が落ちるが命中範囲が広くなり単発命中力や戦術性などに有利に働く。よって武器の攻撃特性や戦術によって選択すべき要素の優先順位は異る。なお「AW−MG25/2」のみ精密予測射撃武器なため特性がやや異る。また二門兵器はどういうわけだか残弾が1になった場合あるいは1発分のE残量しか無い場合には、予測中心側ではなく平行射撃側を発射する。

 二門兵器はコアとの組み合わせで左右の平行射撃幅が変化する。機体正面への左右の射撃幅と予測中心は以下のとおり。値は実測、予測中心側の砲身正面に固定した被弾側の判定半径を変化させて調査したもの、内部座標の区切りによる誤差があるので正確な数値ではないが参考までに。

コア CA・S0・D0 CL CH 予測中心
MG25/2 73 64 79 二脚系は左、四脚タンクは右
GT2000 78 68 83
RF105 105 95 109
RF120 107 98 112
XC5500 108 98 113
XC65 81 71 85
DC/2 81 70 86 二脚系は左、四脚タンクは右
R/4 84 74 89
ED2 113 93 128
C/4(内)
C/4(外)
103
147
85
127
118
162

※脚部による幅の変化は無し。予測中心側は二脚系(軽量・中量・重量・逆関節二脚)が装備した場合に左側に変化するものがある。

 機体半径は75(直径150)、予測中心側で正確に機体中心を捉えた場合は左右幅75以上の武器では両門直撃はできない。特にターゲットが硬直などで停止している場合には予測射撃側は機体中心に着弾する。したがって予測射撃で停止目標に左右同時着弾ができるコアは実質的にCLコアと一部の武器腕の組み合わせのみ。ただし後述する弾速分配誤差などの処理上の制約により若干前後する場合があるので射撃幅75付近ではやや不確定になる。また武器腕は旋回点が各腕にあるため機体正面から左右へ角度が深くなると僅かに射撃幅が狭くなるがロック範囲程度では変化はごく僅かなのであえて狙うにはリスクが高い。
 余談だが武器腕は2次ロック射撃では予測中心側の射撃方向(相互座標の差分ベクトル)をそのまま平行射撃側にも適用するが、後述するエイミング角度射撃時は左右独立して銃口方向(砲身角度ベクトル)へ射撃するため完全な平行射撃にはならない。


<<予測角度射撃>>

 予測をもとに目標への角度を基準に射撃を行う。角度射撃は処理上の制約でやや狙撃精度が落ちる性質があるが、2次ロック状態でも射撃方向を機体操作で補正できる特徴がある。対象となる武器は肩キャノン9種と右腕武器WG−XW11の下側1門。

予測角度射撃による射撃システムには以下の性質がある。
・発射座標から予測される目標位置へ、砲身角度を基準とした射撃を行う。
・最小角度以下の方角に射撃できない死角が発生する。
・銃口の向きへ射撃し、常に銃口方向への制約を受ける。
・銃口のエイミング動作は機体挙動に影響をうける。
・ゆえに射撃方向は射撃時の機体挙動の影響をうける。
・同様に射撃方向はロックサイトの動き(旋回など)に影響をうける。
・1P側の射撃では予測と射撃に1fのギャップが発生する。
・CPU側の射撃では予測と射撃にギャップが発生しない。
・弾は射撃1f後に移動を開始する。(※1)
・その他射撃武器共通の性質を持つ。

※1:「WC−CN35」のみ精密予測射撃武器に準拠し移動遅延が発生しない。(レポ掲載初期にグレネードのみ移動遅延があると解説していましたが間違いだったため修正しました)

 精密・通常予測射撃武器が座標基準の射撃に対して予測角度射撃は角度を基準とした射撃を行う。具体的には予測武器の2次ロック中は目標の予測位置へ向けて銃口を構える動作を行っており、角度系の武器はその銃口方向へ射撃しそれ以外の方向へ射撃することはできない(座標系の射撃武器は銃口の向きには影響を受けない)。したがって処理上の角度単位以下の方向に射撃することはできず、その死角に入ると遠距離では静止目標にもまったく命中できない場合がある。
 そして銃口のエイミング動作には一定の旋回性能がありそれが予測追跡位置に達するまでには若干の時間がかかるため、2次ロックしていても銃口の向きが目標を捉えていないと無駄撃ちになりやすく、銃口の旋回追跡より素早く運動する目標には単純な射撃では命中できない。

 一方で角度射撃系の武器はその制約を逆に利用してシステムによる予測射撃に手動で補正を加えることができる。具体的には銃口の向く直線上に射撃する制約と、銃口追跡が独立した旋回性能をもち機体運動に僅かに遅れる性質を利用し、意図的に銃口を射撃システムの予測より前方や後方へずらして射撃角度に補正をかける方法になる(以降、この射撃方法を手動補正射撃と表現)。例えば銃口エイミングは機体の旋回および移動方向へ引っ張られる性質があり、機体挙動の速度に比例してそれが大きくなる。したがって運動速度が大きいほど手動補正の効果が強くなり、銃口エイミング自体は角度を基準にした追跡なため機体旋回の効果がより強く、水平運動で補正角度を増幅ないし抑制することができ、それらを組み合わせることで手動補正の効果を調整して射撃することができる。
 また予測システムは弾速が速いほど近未来の位置を、遅いほど遠未来の位置を目標にするので、結果として弾速が速いほど予測角度は浅くなる。一方で手動補正は弾速に関係なく機体運動に対して定量的に増減するので、弾速が速いほど相対的に手動補正の効果が大きくなる(高弾速ほど予測角度が小さくなるので同じ補正角度なら高弾速ほどその割合が大きくなる)。手動補正射撃に関わる細かい仕様については射撃特性ディープ編で解説する。※ここでは便宜的に補正と表現するが、一般に用いられる射撃武器の補正強度とは別のものなので誤解無きよう。

 肩キャノンについて、銃口エイミングには稼働限界(左右方向には上半身の稼働限界で上下方向へはほ砲身の旋回限界。右腕武器の稼働限界はほぼ無いと考えていい)がありこれ逸脱する範囲へは2次ロックをしていても稼働限界の角度までしか射撃することができない。参考までに肩キャノンの旋回限界は上約60度、下約40度、アセンによる変化はほとんど無視できる程度、例外的に重二と逆関節の武器腕では若干変化する。また肩武器は厳密にはコアの角度を基準に旋回限界を持つが肩キャノン展開時はコアが常に水平になるように制御されるので気にする必要はない。なお視点の旋回限界は上下に約68度(内部角度768)なのでキャノン旋回限界よりも広く、砲身が旋回できない範囲までロックサイトとガイドが旋回できてしまう。このためサイトサイズが大きいものほど2次ロック状態でもロック方向へ射撃できない範囲が大きくなり、特に下方の稼働範囲が狭く空中で射撃できるタンクではロック範囲とのギャップがかなり大きくなる。
 なお銃口の動きは原則的にガイドやロックカーソルの動きと連動するが、一致しているわけではないので目安程度にしたほうがいい。2次ロック中の銃口エイミングは予測位置を追跡するがロックカーソルは現在位置を追跡し、ガイドは原則的に銃口と連動して予測位置を追跡するが銃口の旋回限界を超えても旋回する。またサイトギャップが強いと状態を把握しにくいので慣れるまではコクピットビューの方がつかみやすい。

 肩キャノンの展開動作速度については詳しく調べていないが、ざっと実測比較してみたところ武器パーツ共通で脚部カテゴリによって多少差があり、かつ腕部やコアあるいは左右肩によっても僅かに差が生じるカテゴリがあるが、主力となる四脚・タンクは変化しない。展開が早い順におおよそ逆関節>軽量二脚>四脚=タンク>中量二脚=重量二脚、例外的に中量二脚に標準腕部(重量級腕部とK1及び武器腕以外)との組み合わせでかつ左肩に装備した場合に限り全アセン中最速になる。原理は不明、ネストの裏工作か?・・・ああでもナインボーはK1だっけ。また二脚系の構え姿勢は展開動作を開始した直後に被弾全高が小さくなり(軽二+K1+右肩キャノンではなぜか変化しない)、構え中は被弾硬直の影響を受けずに旋回できる。

○グレネードキャノンの射撃特性

 ACの象徴的武器と題されるグレネードキャノンはこの武器に固有な特性が多く高い戦術的価値を持つ。対象武器は「WC−GN230」「WC−IR24」の2種。

 グレネードキャノンのみが有する性質として
・弾が爆破判定サイズを持つ。
・エイミング・ロック中に目標までの距離を取得し、これを基準に自動爆破を行う(※1)。
・二重爆風によりその持続時間が長い(※2)。
・爆風が直撃とほぼ同等の攻撃力を有する。
・強力な射撃反動を有する。
などがあげられる。

※1:距離の取得は1次・2次ロックいずれでも可能なのでエイミングカーソルが表示されていれば爆破距離を取得できる。
※2:爆風は時間差でエフェクトを2度発生するが、攻撃判定自は1度のみ有効で2度エンカウントすることは無い。

 グレネードキャノンは弾速を基準とした時限信管と近接信管を実装している。まず自動爆破は1次・2次ロックどちらでも有効でいずれも目標までの現在距離を取得するので、実質的にサイト内に目標を捉えている(カーソルが表示されている)状態であれば自動爆破が可能になる。そしてこれは射撃時の相対距離を超える最小の寿命(f)が設定される仕様なので、自動爆破は必ず目標現在位置の背後側の弾速倍数距離になる。そして広大な爆風は爆心からの距離による威力減衰が小さく爆風外縁付近でも直撃に匹敵するダメージを発生する。さらに予測射撃武器としては唯一判定サイズが与えられている。これは厳密には爆発を起こす判定範囲(おそらく円柱形状)でそれが移動するため結果的に前fと現fを結ぶ断面積をもつ判定領域になり、この判定領域に接触するとその場で爆炸する。

 なおグレネードキャノンは爆破初期に一定半径の爆風縮退f(爆破fに発生した爆風が一度収縮してから膨張する)を挟むため直撃させないかぎり1f目に爆風攻撃判定に捉えることはできず高速移動するターゲットには爆風が達する前に判定圏外へ離脱されやすい。このため目標運動を先読みしながらの手動補正射撃は必須条件に近く、自動爆破は現在の相対距離の遠方側で爆炸するので急激に接近する移動目標には対応しにくく、爆破までに時間がかかる遠距離では離脱運動目標にも命中させにくくなる。したがって直線的に接近離脱している目標には直撃を狙う必要があるが近接信管を持つのため比較的直撃させやすい。そして1次ロックでも有効な時限信管と広大な爆風範囲により接近戦などでは回避困難な命中力を発揮しうる。また判定範囲を持つので水面地形でも爆破可能、かつ寿命で爆破するため射程限界でも自爆し爆風範囲が広いので非ロック射撃でも十分実用できる。

 キャノン発射反動は非常に強い瞬間加速を発生させるため「SP−SAP」は戦術によってを使い分けるといい。例えば四脚(や二脚)での近接迫撃は自爆の危険があるが発射反動で圏外へ後退するほどの反動を伴い、タンクの上昇加速(グレネードブースター)としては特にホバータンクでは2種ともほぼ上限の反動を伴うので若干降下中でも瞬間的に上昇最大速度まで加速する。加速度は発射方向の逆向きに発生するが、反動がいくら高くても発生直後に機体の最大速度まで減速するため運動性能が低い場合や既に最大速度に近いとあまり効果がない。これは地上では地上ブースト最大速度が、空中タンクは上昇最大速度と空中水平最大速度が該当する。なお地上では垂直速度は無効化されるので上昇する場合は浮いた状態で発射する必要があるのでタンクにしか利用できない。逆に反動を抑えたい場合は「SP−SAP」が効果的で、低安定機体で反動が無効化(バグ?)してしまった場合を回避できる。


<<エイミング角度射撃>>

 予測射撃武器は1次ロックした状態では目標の現在位置へむけて銃口から角度を基準に射撃を行う。そしてこの射撃システムの特性は予測せずに現在位置へ向けて射撃する点を除いて「予測角度射撃」に準ずる。

 1次ロックの状態では銃口の向きによって相手の現在位置を捕捉している状態で、この銃口の延長線上が射線(弾道)になる。より厳密には2次ロック状態以外では常に銃口方向への射撃になる。また両肩キャノンは砲身の旋回機能をもたず肩キャノンのような上半身でのエイミングもしないのでその瞬間のコア正面に射撃するが、脚部カテゴリや挙動状態によってコア正面方向は変化する。またこのエイミング角度射撃でも肩キャノンと同様の操作で手動補正をかける事ができるが、「予測位置からの手動補正」になる肩キャノンに対し単純な1次ロックでは「現在位置からの手動補正」になるため高速移動中の目標に追いつくのは難しい。

○精密・通常予測武器による手動補正射撃

(※この項目はレポート改訂時に新規に追加した内容です)

 通常・精密予測射撃武器の2次ロック射撃は座標基準の射撃システムになるので原則として機体操作で着弾点や弾道をコントロールすることはできないが、このエイミング角度射撃を利用して肩キャノンに近い手動補正射撃をする方法がある。 まず全ての予測射撃武器は2次ロック中は常に銃口が予測位置を追跡しており、それが機体旋回・運動に引きずられる性質がある。そして全ての射撃武器は2次ロック以外では角度射撃になり銃口方向へ射撃する性質があり、他の武器が無い状態で武器切り替え操作をすると2次ロックを解除しそのまま再ロック処理を行う性質がある。これらを利用して腕武器単装を条件に、2次ロック中に肩キャノンと同様に目標の未来方向へ手動補正を加えた状態から武器切り替えと同時に射撃をすると角度射撃にシフトして銃口方向へ射撃する。この方法で座標系の通常・精密予測射撃武器でも擬似的に角度系に切り替えて実質2次ロック状態(目標予測位置を追跡している状態)に手動補正を加えた射撃が可能になる。原理的にはほぼ肩キャノンと同じものだが、運動制約がなくブーストパワーを最大限に生かした手動補正射撃ができるのでコントロール性が高く、一方で運動性能域や武器選択肢が広がることで結果として角度射撃系のデメリットも露呈しやすい。

 操作としては武器切り替えと射撃を同時入力する必要があるが、意図的に実装された仕様ではないため入力の時間的余裕は同f内に限られ、射撃が先行すると座標基準射撃になり切り替えが先行すると現在位置方向へ後退していずれも失敗してしまう。このため操作性が最大の関門になると思われる。なお切り替え後は1次ロック→現在位置追跡→ロック処理→2次ロック復帰→予測位置追跡になり、このサイクルはさほど長くはないがロックパフォーマンス(FCSロック速度と相対距離と相手の移動速度)によって若干変化する。そして銃口のエイミング速度には限界があるのでサイトに捉えた直後や2次ロック直後あるいは目標が近距離で急激に移動方向を変えた直後などは手動補正射撃には適さない。

 この射撃方法は単武装(ブレード装備は可能)か肩武装を撃ち切った状態にしておくことが必要条件になる。対象は予測射撃ができる全ての腕武装で、砲身旋回機能を持たない両肩キャノンは不可能。実践的には弾速や機体運動性能あるいは自機の挙動によって変化する補正強度やそれに伴う有効距離の把握、加えて肩キャノンと同様に砲身のエイミング状態も加味する必要があり、射撃時に一旦2次ロックを解除することや角度射撃による死角の発生あるいは操作の煩雑化などのリスクも少なくない。また肩キャノンと違い手動補正しながら連射しにくい点と線判定・単弾発射タイプが多いのでより高い狙撃精度が要求される点などで劣るが、腕武装には運動制約がなく手動補正に適したサイトタイプや弾速に秀でたものが多くかつ上下旋回角度の限界が深いメリットもあり(※旋回限界はほぼ無いが深すぎるとヘンな方向へ射撃してしまうことがある、原理は不明)、単装状態でも実質2種類の射撃システムを使い分けることができる点に優れる。そして通常予測系の2次ロック射撃では命中しえないサテライト運動などを狙撃しうる。手動補正射撃に関わる要素は射撃特性ディープ編で解説する。
 余談だがCPUは対人戦ではありえない特殊な行動条件があるので手動補正射撃の練習には向いていない。


<<非予測兵器>>

○射撃武器系(ロケット)

 ロケットは予測システムを持たず手動エイミングを必要とするカテゴリで、射出時に1f分の弾の移動遅延があり射撃武器共通の弾の性質を持つ。対象となる武器はロックサイトを持たない20〜60系(ロケット)および90系(機雷)、原則として表示されるガイド方向へ射出するが判定は現f座標と前f座標を結ぶ直線になるので弾速が高いほど1f分の判定距離が長くなり命中させやすい。例外的に機雷のみ射出速度と減速度が設定されており、減速しきると爆破判定範囲と時限信管をもつ独立したオブジェクトとして扱われるため全ての要素に判定を持ちエンカウントしてもヒット表示されない。
 このカテゴリの手動エイミングは水平方向へは機体旋回で、上下方向へは砲身旋回(サイト旋回)で行うが、砲身に共通の旋回限界(上下とも45度、内部角度512)がある。この旋回限界はコアの向きが基準になるためコアが下を向いている挙動状態ではその分旋回限界も下向きにシフトし、実際にエイミングできる限界角度はその瞬間の機体挙動とアセン(主に脚部)に依存する。なお表示されるガイドは原則として砲身と連動するが旋回限界を無視して上下へ稼働するのでその機体の挙動に慣れないと高度差のある目標を狙いにくい。また非選択時は待機位置を向いており切り替え直後に発射するとその瞬間の機体挙動にそった砲身方向に射撃してしまうのでガイド位置に砲身が準備されるまで若干の時間を要する。余談だがロケットはロック機構を持たないだけでFCSによって常に視点正面に砲身を制御されており、FCSの制御が離れると待機位置かコア正面に固定される。例えばブレードモーション中はブレホにFCS制御を取られるので、ブレホ終了あるいは着地や被弾衝撃によるブレホ解除時に射撃するとその瞬間のコア正面に射出する。

○弾頭射出系(爆雷)

 爆雷はロックサイトと自動追尾機能を持たない点を除いてミサイルと同等の弾特性を持つ。具体的には各武器の射出速度と集弾性にしたがって前方に発射するが、機体慣性を引き継いで発射されその後は自由落下してエンカウントか寿命によって消滅する。このカテゴリは武器選択中は正面やや斜め上寄りに、待機中は上向きになっているが上下方向への砲身旋回機能を持たない。総じて集弾性が悪いため機体旋回による手動エイミングはあまり意味をなさず、弾道のコントロールは切り替え直後にやや上向きに発射する程度でほぼ機体慣性に依存するので発射時の移動方向やその速度に大きく左右される。余談だが目前の地上目標に落着させたい場合は比較的高めの落下速度で上向きの射出速度を相殺し着地直前に射出することで可能だが着地硬直のリスクが高い。そして着地後は垂直速度をリセットされてしまうが例外的に接地fに射出が重なった場合には有効となるようなので、ブレードモーションを利用して先行入力したまま着地解除と同時に発射する方法では初速に直前の機体慣性を引き継ぐ。また必中範囲に捉えていてもブレホは前後左右への急加速を継続するので邪魔な場合は武器切り替えでキャンセルできる。がやはりリスク回避は難しい。


<<誘導兵器>>

 ミサイルの性質は射撃武器とは大きく異り、弾頭がAC機体と同様に加速度・最大速度・旋回速度などを持ち、加えて慣性の影響を受けるため射出も含めて以下のようなかなり複雑な課程を経る。ロックオン過程については武器性能ベーシック編で解説。

ミサイル(弾頭)の共通特性
・弾頭は機体慣性の影響を受け機体の速度を引き継ぐ。
・弾頭の種類ごとに1fあたりの加速度・最大速度・最大旋回速度が実速度の単位で設定されている。
・弾頭の種類ごとに推進寿命・弾薬寿命が時間(f)で設定されている。
・自機・敵機に関わらずエンカウント判定をもつ。
・弾や爆風に対してはエンカウント判定を持たない。(機雷は例外)
・爆風は敵・自機ともにエンカウント判定をもつ。

射出過程
・発射方向が僅かに予測追跡を行う(※稼働限界は非常に小さく、旋回機能自体を持たない武器もある)。
・各武器の発射位置ごとに射出角度(原則的に弾頭角度と一致)が設定されている。
・各武器ごとに集弾性が設定されており、それに従いランダムな角度で射出される。(※推定、未調査)
・各武器ごとに射出速度が設定されている。
・射出速度と角度は機体慣性の影響をうける。
・慣性は弾頭の向きには影響を与えない。
・原則的に弾頭は射出2フレーム後に追跡運動(推進・旋回)を開始する。
・複数ロックオンでは3f(リロード2f+射出1f)で射出を繰り返す。

追跡過程
・推進中は予測にしたがって追跡運動を行う。
・毎fに弾頭を予測方向へ最大旋回角度を上限に旋回する。
・毎fに弾頭方向へ設定された加速度で加速する。
・弾頭の速度は設定された最大速度を上限とする。
・分裂・再射出タイプは射出から一定時間経過後、再射出過程を経て再び追跡過程へ移行する。

寿命課程
・各弾頭に設定された推進寿命を経過すると推進を停止する。
・推進停止後は落下加速度にしたがって自由落下を行う。
・各弾頭に設定された弾薬寿命を経過すると消滅する。
・自由落下中もエンカウント判定を持つ。

 ミサイルはACに近い挙動をもち射出時の機体慣性(実速度)がミサイルに引き継がれる。射出されたミサイルは主に2f後から追跡運動を開始し、追跡制御は毎fにターゲットの予測方向へ弾頭を旋回最大速度を上限に旋回し、弾頭方向にむけて最大速度を上限に加速度を加算する(テールスモークなどの描画処理はfスキップしているっぽいが詳しく調べていない)。ミサイルの誘導性能は最大速度に対して軌道修正するための旋回速度と加速度の比が大きいほど高くなる。ただしこれらの数値は全般的に弾速とのバランス調整程度にしか設定されておらず、結果として弾速の小さいミサイルほど最小旋回半径が小さくなることで誘導性が高くなる。推進寿命はミサイルが追跡運動を維持できる限界時間(フレーム)、寿命が尽きると自由落下する。弾薬寿命は消滅までの時間を表す。余談だがミサイルの挙動演出は非常に凝ったつくりになっていて、まず射出された弾頭は追跡開始と同時に回頭して発光・発煙を開始し、加速度が大きいほどミサイルの推進煙が長くなり、推進寿命末期にはこれがヨレヨレと短くなりながら弾頭もふらつきはじめ(この間追跡性能が低下している?)、最後は数回ほど推進煙をまたたかせてから光を失い事切れるように自由落下していき、この落下中の弾頭にも判定がある。

 ミサイルは慣性に影響を受ける性質があるので射出時の機体挙動で軌道や初速をコントロールすることができる。射出のメカニズムは武器ごとの固有な射出角度に加え予測角度(稼働限界が非常に小さい)で弾頭方向を修正し、拡散する場合にはこの角度からランダムな角度で修正してその弾頭方向へ射出される。そして射出の瞬間の機体がもつ慣性がそのまま実速度として弾頭へと受け継がれ、射出から2f後に予測目標にむけて旋回しその弾頭方向への加速運動を開始する。したがって機体運動は射出方向と初速をコントロールし、機体旋回は射出される弾頭の向きを操作する。

 実践的にはミサイルは軌道を意図的に操作して射出できるので直線弾道に制約される射撃武器とは異なる多彩な戦術的価値を持つ。参考までに以下にミサイル射出の基本的な戦術操作を紹介する。

・前進中に射出すると前方への初速を高め、射出角度や散開幅を移動正面方向へ狭め、着弾を早める。
・後退中に射出すると前方への初速を抑え、直後の誘導性を一時的に若干高め、射出角度や散開幅を増幅し、着弾を遅らせる。
・左右移動中は射出軌道を水平方向へ大きく偏向させ全般的に最もコントロール幅が大きい。
・旋回中は射出と追跡開始初期の弾頭角度を左右方向へ修正し、狙撃や水平運動によるコントロールをサポートする。
・切り返し中の連続射出は前後左右へ散開射出させる。機体水平加速度か歩行性能に大きく依存する。特に垂直打ち上げ型ミサイルで有効、通称“扇撃ち”。垂直ミサ以外は旋回で増幅も可能。
・ジャンプ・上昇中の射出は軌道を若干上方山なりに変化させ、弾頭の地面接触の抑制や落下目標への攻撃、近距離寄りの対空調整などに。
・落下中の射出はコントロール性が低く着地硬直のリスク高い。多ロックで連続発射点の高度を下げながら間合いを詰める、あるいは垂直ミサの水平撃ちなど。
・停止・低運動状態の射出は慣性を解消し基本設定に近い軌道に戻す。左右切り返し中は減速しきった瞬間の射出を狙う。
・武器切り替え直後は準備動作中に上向きに射出する(両肩ミサイルは不可、要・高ロック速度FCS)。障害物越しや地面接触の抑制、上空迂回、対空攻撃などに。

 機体運動による射出コントロールは運動方向と射出方向の角度差が大きいほど強く作用し、機体加速度と操作性が大きく異なるので垂直運動よりも水平運動の方が影響が大きい。このため前後進は上方や左右へ射出するタイプへの効果が強く、左右移動は前方へ射出するタイプへの効果が強く、それぞれのミサイルの有効性と命中率を大きく左右する。また機体旋回は慣性ではなく射出と弾頭方向の調整になるので若干コントロールの質が異なり、主に機体運動による射出コントロールの増幅や抑制などの調整用に。またミサイルは弾頭速度に対して加速度と旋回性能の比が大きいほど誘導性能に優れるので、射出の逆向きに運動していると射出から最大速度に達するのに時間がかかりその間僅か数fながら誘導性能を高める(最小旋回半径を狭める)ことができる。ただし後退運動は同時に着弾を遅らせ迂回・散開幅を広げる効果もあるので直接目標方向へ射出コントロールできる場合はその方が効果は高い。なお両肩ミサイルはパーツ旋回機能を持たないためFCSの方向制御が効かずコアの向きにダイレクトに影響を受けるが、コアの向きはアセンとその瞬間の機体挙動に依存するので相性のいい機体構成を巧く利用すると通常のミサイルでは難しいコントロールや戦術も可能になる。

 ミサイルはこれらを様々に組み合わせて軌道をコントロールすることで多彩な戦術バリエーションが生まれるが、逆に射出時の操作がミサイルの軌道に大きく影響を与えるため的確に射出できないと無駄撃ちになることが多く回避運動との両立も難しい。そして武器ごとの射出設定(角度・初速・散開・迂回など)によってコントロール方法の相性が大きく異なり、押すか引くかあるいは間合いをとって撃ち合うかもしくは対空寄りか対地寄りかなどの戦術も武器種と射出コントロール方法の相性に強く影響する。このため軸となる戦術アプローチ次第で有効性が激変することもありアセンや扱いには習熟を要求されるが、射出時の機体運動の影響が小さいあるいはほとんど受けないミサイルも用意されている。
 またミサイルはそれ自体が推進力をもつが最大速度で上限になるので結果的に射撃武器と同様押す側にとって相対速度が高くなるが、ミサイルは前進射出で初速が高まるので相対速度差を圧縮しやすく、かつ誘導兵器は後退しながらの回避はむしろ難しい。そして着弾衝撃による足止め効果もあり、ミサイル連携には引く目標のほうが連携武器へスイッチする時間的余裕を確保しやすいなどの性質もあるので、追撃戦のサポートやそれらを軸にした戦術に効果的な武器種でもある。


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